内田ミシン(uchidamishin) 第4回 これからは、横に広げていきたい

「内田ミシン」をスタートして、まだ1年半の内田美貴子さんですが、これからどのようなものをつくっていきたいのか? 未来への展望を語ってもらいました。
- SOUQ
- いまはドロワーズとか帽子の制作を主にやってらっしゃいますけど、これから「内田ミシン」として、つくっていきたいものとかはありますか?
- 内田
- いま、おかげさまで走り出してはいるのですが、結構補充になってきていまして。
- SOUQ
- 補充?
- 内田
- 同じものをつくり続ける状態になってきている。希望なんですが、これからはちょっと作業を減らしつつ、もうちょっと横に広げたいなと思っています。
- SOUQ
- 幅を広げるということですかね?
- 内田
- そう。いまやっているドロワーズももうちょっとバリエーションを増やしたりとか。ただ私、あまりできることが多くなくて。専門学校に行ってるわけでもないし、ものづくりを学んだのはほとんど文化屋なんで、それでも1年半やってみてやりたいことが増えてきたので、猛烈に走るだけではなく、ちょっとここでのんびりモードにして、横に広げたいなと、それをいま切望しています。

- SOUQ
- ドロワーズの他には、どのようなアイテムを横に広げたいですか?
- 内田
- ワークウエアにもすごく興味があるので、最近コートとワークパンツのセットをつくったりしてるんですけど、それをもう少しおもしろい生地でやってみたりとか。なんかこう、ファッション寄りではなく、労働着とか家で着れるようなものとか、そっち系をもう少しバリエーションを増やしたいんですよね。
- SOUQ
- 作業着的な?
- 内田
- そうですね。街にも着ていけるし、ファッションとしてとらえてもらってもいいし。古いワークウエアをリメイクしたりしてるんですけど、それだけじゃなくてオリジナルで型を起こしたり。そういう自分が好きなものでもう少しバリエーションは増やしたいなというのは思っています。
- SOUQ
- 帽子やドロワーズもすべてパターンから起こしてつくってるんですよね?

- 内田
- はい。研究したり、やり直したり、またつくったりで結構大変なんですけど、それがおもしろくて、いくらでもやってられるのと、文化屋でバイヤーもやっていたので、材料探しとか物探しが大好きで。もっと生地とかも掘り下げていきたいなあと思ってます。
- SOUQ
- 生地を見ているときの内田さんは、本当に楽しそうですもんね。
- 内田
- もうちょっと、ここやりたいけどできてないという課題が、毎日なにかやってると、どんどんたまっていくんですよ。
- SOUQ
- それは良くないこと?
- 内田
- いや、なにもやってないと、なにもたまらないんですね。なんでもいいから1つやってると、2つめがやりたくなるんですよ。だから、人って、動き続けるのが大事だなと思って。それでなにかがどんどん生まれていくんだろうなって痛感していて。

- SOUQ
- さらに忙しくはなりますけどね。
- 内田
- 「文化屋雑貨店」で20年間週一休みでやってきて、そのあと1年半遊んでるんですけど。遊んでいるとだんだん遊んでいることに飽きてきちゃったんです。で、人と接したり関係するときも、遊びの関係より仕事するときのほうが、その人の人となりが見える。仲良くおいしいものを食べたり、映画を観に行ったりするのも、それはそれで楽しいんですけど、なにか仕事なり、つくりだすことをいっしょにやるほうが、人間らしい関係が強まるような気がします。
- SOUQ
- 横への広がりというのは、アイテムのバリエーションもあるけど、人でもあるんですね。
- 内田
- もっとみんなを巻き込みたいですね。量産しようとか、工場に出してラクして過ごそうとかいう気は全然なくて。仕事的にはもっとめんどくさいことを増やしたいんですよ。

- SOUQ
- めんどくさいこと?
- 内田
- いま私がやってることって、お店やってる人とか、先生とかに言わせると、なんでそんなにめんどくさいことをいっぱいやってるんだって。たとえば工場に出したら同じ型のドロワーズをいっぱいつくれるし、お客さんも喜ぶんじゃないかと言われたり。
- SOUQ
- そうでしょうね。
- 内田
- 私はそういうものづくりのノウハウは結構文化屋で学んできていて、たとえば、量産しようと思ったら香港の工場に依頼したりとか、そういうことは知ってるんですけど、あえてめんどくさいことをやってる。なぜかというと、そんなめんどくさいことをやってる人はいないし、それが楽しいから。
- SOUQ
- めんどくさいを楽しんでる。
- 内田
- 1年半やってきた今だから言えることだと思うんですけどね。やってみないとわかんないんで。だから次のステップとしては、なんて言ったらいいんだろう…もうちょっとわかりにくいものをつくりたい。そんな感じかなあ。

- SOUQ
- なかなか難しいですね。
- 内田
- 「文化屋雑貨店」のときやってたことと「内田ミシン」がなにが違うかを考えることはときどきあって。で、「文化屋雑貨店」のとき、どこかにこれは私は好きだけど、文化屋っぽくないからやらないとか、この生地はすごくいいけど、文化屋の商品としては高すぎるから使わないとかあったんですよ。今1人になって、それは全部バラしたんですね。いいと思った生地は高くても使ってみた。そしたら、それでも賛同してくれる人が思った以上にいて、それで私は調子に乗っている。
- SOUQ
- やっぱり、調子に乗るんですね(笑)。
- 内田
- 仕入れも楽しいし、本当は店にも立ちたい。でも毎日つくることもしたいんで、時間が足りないんですよ。こないだ1年ぶりに父の法事で休みを取ったとき、私ちょっと走りすぎてたなと思って。走る速度が今100kmだとしたら、80kmぐらいに落としてもいいのかなって。そしたらもうちょっとやりたいけど、できていないことに取りかかれるんじゃないかと思っています。
取材・文/蔵均 写真/東泰秀