上出長右衛門窯(かみでちょうえもんがま) 第4回 学生時代、そしてこれからのこと | SOUQ ZINE スークジン

上出長右衛門窯(かみでちょうえもんがま) 第4回 学生時代、そしてこれからのこと

上出長右衛門窯(かみでちょうえもんがま) 第4回 学生時代、そしてこれからのこと
九谷焼の「上出長右衛門窯」六代目・上出惠悟さんにお話を聞く「ピックアップクリエイター」の最終回は、惠悟さんの大学時代、そしてこれからのことについてお話をうかがいました。
SOUQ
惠悟さんは東京藝術大学出身ですが、大学時代はどういう勉強をされてたんですか?
上出
僕は油絵科に在籍していたんですけど、在学中はほとんど作品をつくっていなくて。大学にもあまり行かず、作家さんのお手伝いとかトークイベントのスタッフなどを学外でしていました。ブッキングをしたり、告知のポスターやフライヤーをつくって、トークを記録したりしていました。映像を撮ったりもしました。こういったイベントの企画に携わったことは、いまの自分にとっては、すごく役立っていると思いますね。
SOUQ
プロデューサー的な活動ですね。それは、いま「上出長右衛門窯」でも続いているのかなあという気もします。伝統に縛られず、すごく新しいことにチャレンジしたり、いろんなところに出て行かれたり。
上出長右衛門窯
上出長右衛門窯「上出長右衛門窯」のショールームにあるラジカセ。「笛吹」のバリエーションとしてもデザインされている。
上出
いろんなことに興味があるだけで、自分にプロデュース力があるとは思わないですけどね。大学在学中にプロデュースみたいなものを学んだつもりも全然ないです。

ちゃらんぽらんと思われて

SOUQ
とすると、学生時代には制作はあまりしてなかったんですか?
上出
はい。東京藝大は、やっぱりモノをつくってナンボの世界だったので、先生からは「上出くん、キミはなにしてるんだ?」って白い目で見られてました(笑)。僕もそれに関してはすごい劣等感があって。実はうちは母の実家も九谷焼を生業にしている家なんですが、大学に入ったときに母方の祖父が病床だったんですけど、合格をすごく喜んでくれたんですよ。
SOUQ
なかなか簡単に入れる大学じゃないですからね。
上出長右衛門窯
上出
何もしていなかったわけではないのですが、大学から見たらちゃらんぽらんな学生と見られていて。でも祖父の顔を思い浮かべると、そのまま卒業するのもなんだなと思って、ちゃんとなにか作品をつくってから卒業しようと。でも、そう思ったときはもう大学3年で、4年に入るとすぐに卒業制作なので、それには時間が足りないと思い、1年間休学させてもらいました。
SOUQ
休学中は、どうされていたのですか?
上出
実家がある能美市に帰ってきていました。そして九谷焼の現状をリサーチしたり、九谷焼ができるまでの流れを肌身で感じながら、徐々に自分でもなにかつくってみようと粘土に触れるようになりました。それで翌年、卒業制作を九谷焼でつくることになったんです。
SOUQ
卒業されてからは、すぐ能美に戻ってこられたのですか?
上出
そうですね。自分の興味も工芸やものづくりの方へ向いていったので、すぐに戻りました。経営状態もよくなかったので、時間がないなとも感じていましたね。

なんとでもつながれることの大切さ

SOUQ
「上出長右衛門窯」では、惠悟さんも絵も描いてらっしゃるんですか?
上出
自分で絵付けはしてなくて、絵付師さんがしています。僕は全体的なものを見ながら方向性を決めていったり、アートディレクターに近いですかね。デザインをして指示をして、全体をまとめていく。
上出長右衛門窯「上出長右衛門窯」の絵付場では絵付を。
SOUQ
窯の仕事以外にも、コペンハーゲンの茶葉店のアイコンをデザインされたり、高知で映画監督の安藤桃子さんが営むギャラリーでの展示に参加されたり国内外で活躍されています。
上出
音楽や映画も好きだし、アートはもちろんさまざまな文化や歴史など、わりといろんなことに興味があるほうだと思います。九谷焼って絵で表現するものなので、いわばなんでも表現できるし、なにとでもつながることができるメディアだと思うんです。だからなるべくいろんなことに関心を持ち続けたい。
SOUQ
本当にその通りだと思います。
上出
職人として一つのことを追求するのは、それはそれですばらしいことで敬意を持っていますが、それだけではいけないと思います。続けていれば行き詰まることは必ずあって、その答えは思わぬところに落ちていたりすると思いますし。僕たちはグループなので人間性も大切です。それに黙っていても仕事がもらえる時代ではなくなりました。昔より広い視野が必要です。
上出長右衛門窯平盃:犬と平盃:猫。「盃の犬は、犬蓋っていって蓋のつまみとして使っている人形で、それを盃の底に置いたらおもしろいかなと思ってつくりました。『猫はないのか?』という声が多くて、猫も始めました」と惠悟さん。

同じ流れの中の新しいこと

SOUQ
古典の新解釈や海外アーティストとのコラボなど、惠悟さんらしくどんどん新しいことを試みてらっしゃいますが、これからやろうとしていることはありますか?
上出
今までは笛吹みたいに、アレンジというか、古くから続くものをもう一度新鮮な視点で見てもらうための仕掛けづくりをしてきました。でも今は次世代の笛吹のような普遍性のあるものを自分たちでつくりたいというふうに思っていて。
SOUQ
長く残っていくようなものですね。
上出
伝統的なもののよさとか雰囲気とか考え方とか、磁器の歴史の流れの中にいながら新しいことをやりたい。ハイメはいろんな意味で外の人なので、彼の視点で見た景色というのがあったんですが、今度は僕たちにしかできないことをやりたい。同じ流れの中で新しくて普遍性を感じるものをつくることはあまり誰もやっていない気がしていて。今はそういうものをつくりたいという想いが強いですね。
上出長右衛門窯
SOUQ
伝統はちゃんと受け継ぎながら、何か新しい要素を加えるということですかね?
上出
それはわかる人が見たら「わー新しい!」ってなるかもしれないけど、全然知らない人が見ると、「これ昔からあったんですか?」と言うようななにげないものかもしれません。みんなが安心して受け入れられるものをつくりたい。最近ようやく環境が整って、新作をつくり始めてるんですよ。
SOUQ
その新作はどういうものですか?
上出
犬の形の皿をつくりました。犬を飼ってるんですけど、犬の夢を見て。夢を見ている最中から、古染付のお皿が頭に浮かんでいて。夢ってすぐ忘れちゃうんで起きてすぐ絵を描いて、それを職人に「今度はこれをつくろう」って見せながらイメージを伝え、原型をつくり始めました。夢を見たのが2018年の1月11日で、戌年のワンワンワンだったんですよ(笑)。

写真/桑島薫

■EVENT■
「上出長右衛門窯」が出店するイベント!お近くの方はぜひ!

上出長右衛門窯

「金沢・加賀・能登展」
会場:阪急うめだ本店 9階催場
会期:2019年1月16日(水)~21日(月) ※催し最終日は午後6時終了
http://www.hankyu-dept.co.jp/honten/h/kanazawa2019/index.html

Creator/Brand

上出長右衛門窯(かみでちょうえもんがま)

石川県の代表的な伝統工芸である九谷焼の窯元

上出長右衛門窯(かみでちょうえもんがま)

「上出長右衛門窯」は明治12年石川県に創業。東洋で始まった磁器の歴史を背景に、職人による手仕事にこだわり、一点一線丹誠込めて割烹食器を製造しています。

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