『山の出合い』前編 ひとつのテーブルが生み出す人との“出会い”

ここにあるのは、ひとつのテーブルだけ。
京都府の中で唯一の村、『南山城村 童仙房』。茶畑が広がる山の上に、ひとつの長いテーブルがあります。それが、『山のテーブル』。保育園だった建物をリノベーションしたこの場所は、地元の食材をふんだんに使用した日替わりの食事が楽しめる場、出会いの場として、地元の方たちだけでなく、周辺地域、そして全国の人々の癒しの場となっています。

南山城村は、三重県伊賀市、滋賀県甲賀市、奈良県奈良市の3県に接していて、いろんな地域文化が混ざっている村です。見渡す限りの茶畑、山々は大自然を感じさせてくれますが、大阪市内から1時間半と“便利な田舎”なのだそう。『山のテーブル』がある童仙房という地域は、明治時代の開拓地で比較的歴史がまだ浅く、村人全員が移住者。
そんな童仙房で、あるふたりが、“お茶をきっかけとした人のつどいの場”を作ることはできないかという思いから2017年8月11日・山の日にカフェレストラン『山のテーブル』をオープンさせました。そのお二人が、對中剛大さんと柳本奈都子さんです。
だんだんとこの村のことを、好きになっていった。

「僕は元々、まちづくりや設計、料理などの仕事をしていて、様々な地域で仕事をしている中で南山城村に出会いました。きっかけはこの童仙房にあるギャラリー「ARABON」で開催されたイベントでした。ご縁がつながり、「ARABON」を手がける清水さんに「保育園を使わないか」とお声がけいただきました。
お声がけいただいた当初は、仕事や僕自身の生活の都合もあって“単発のイベントなどで使えたら…”と構想していました。でも、やっぱりよく考えてみるとこの場所が“保育園”という学び舎であったこともあり、村を知り、村の方と交流する場所にして、この地域や暮らしや産業、豊かさを“伝える場所”にできないかと思ったんです。それに、食で人と地域をつなぐ場所、風土を味わい体験する場所にもなり得るのではないかと」
そう語ってくれたのは、現在大阪と南山城村の二拠点で暮らしている對中さん。村の豊さや文化を発信する季刊のフリーペーパー『やまびこ』を制作しながら、村の情報を教えてもらったりそれを逆に都会に伝えたりする活動をしていく中で『山のテーブル』の準備を少しずつしていったのだそう。
「ただ、いきなり村によそ者の僕たちが入っていって、人を呼ぶと言っても、住民の方たちにとってはストレスとなってしまうのではないかと懸念もありました。なので最初はスローに動いていって、週に2日だけ開ける食事の場としての活動がスタートしました。」

そんな對中さんと一緒に『山のテーブル』の立ち上げに携わった柳本さんは、活動を通して南山城村に惚れ込み、移住を決意され、現在では村人として『山のテーブル』を支えています。「出身が京田辺なので、1時間もあればこの村に通えるのですが、準備を進めていくうちにだんだんと好きになっていって。この村も、人も。本当に素敵な人ばかりなんですよ。その気持ちがだんだんと大きくなって、移住することに決めました」柳本さんは、そう嬉しそうに話してくれました。

作家さんが、自然と集まりたくなる村。
南山城村には、この地を活動拠点にしてものづくりを生業にするクリエイターがずっと前から多くいらっしゃったそう。
『山のテーブル』ができる8年ほど前から、保育園の隣にある小学校を使って『山ノ上マーケット』というクリエイターが集うイベントが定期的に開催されていました。車が一台しか通れないような山道が険しい場所にあるにもかかわらず、1日で数千人が全国津々浦々から集まるイベントになり、作家さんたちが移住するきっかけのひとつとなっていました。
こうして少しずつ、南山城村は、物づくりをする人、それを買いたいという人が集まってくる場所となっていったのです。今回の『うめだスーク』でのイベントでは、そんな作家さんたちの作品がずらりと並びます。作品を手に取るとき、そっと南山城村の景色や『山のテーブル』の背景に思いを寄せてみてはいかがでしょうか。
後編では、実際に活動する作家さんたちの作品やものづくりに触れながら、『山のテーブル』が届けていきたい想いについて、深掘りしていきます。
■イベント情報■
2021年 2月17日(水)~23日(火・祝)
営業時間:午前10時~午後8時
※最終日は午後4時終了
山の出合い「お茶のある暮らし」京都・南山城村
阪急うめだ本店 10階『うめだスーク』中央街区パーク
■ショップ情報■
「山のテーブル」
住所:〒619-1401 京都府相楽郡南山城村童仙房三郷田47 旧野殿童仙房保育園
営業日時:日曜、月曜 1.2.3 月は冬季休暇
11:00-17:00(L.O16:30)要予約ランチ3日前、 喫茶1日前まで
取材・文/藤田真奈 写真提供/山のテーブル・奥山晴日(茶畑遠景)
Story
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Creator/Brand

レストラン、喫茶
山のテーブル
京都で唯一の村、南山城村の童仙房にある「山のテーブル」。保育園保育園だった場所を、もういちど人々の集いの場・学び舎として再生し、「衣・食・住」に深くかかわり地域に開かれた場所にしたいと考えています。