『山の出合い』後編 ひとつのテーブルが生み出す人との“出会い”

ひとつのテーブルで、できること。
「私たち『山のテーブル』って、この村で新参者なんですよ」そう言うのは、柳本さん。確かに、2017年の夏にオープンした『山のテーブル』にとって、何十年と南山城村で活動する作家さんたちと比べると“新参者”なのかもしれません。でも、どうしてここまで謙虚な姿勢でいるのでしょうか。

「ここの作家さんたちは、みなさん本当にすごい人たちばかりなんです。それぞれが個々で活動しながら、しかもそれがものすごい熱量を持っているので、自然とお互いがお互いを刺激しあって、とても良い空気が流れています。そんなみんなで高め合っている姿を見ていると、私たちも頑張らなくちゃって思います」と柳本さんは言います。

「だからこそ、『山のテーブル』は“余白のキャンバス”でありたいなと思っています。ここは、長いテーブルが一つだけある空間で、他には何もありません。テーブルで食事をしたりお茶を飲んだり。ここで過ごす時間を、すべてその人色に染めてもらえたらなって。それはもちろん作家さんにとってもです。この場所をうまく使ってもらって、いろんな人と繋がるきっかけにしてもらえたら嬉しいです」そう言う對中さんは、なんだかすこし嬉しそう。
今回は、『山の出合い』にも登場する作家さん4名をご紹介します。4名の作家さんのアイテムは、イベント終了後からSOUQ ZINEでもお取り扱いスタートします。
自然の良さも不格好さもそのままに。
木製作品『STUDIO INTO』

まずは、木や金属製のカトラリーや木製の照明器具、遊具や家具などを作っている『STUDIO INTO』の永尾博司さん。木の種類によって異なる性質のそれぞれの良さを生かした独特の素材感、質感が特徴的な永尾さんの作品は、ひとつの作品で、さまざまな使い方で楽しめるのが特徴です。

自然のままの素材で飾らず、無駄のないシンプルなデザインのカトラリーは、実用性はもちろんのこと、キッチンのインテリアイメージをぐんとおしゃれにしてくれるものばかり。

作品をつくる永尾さんは、「南山城村と出会ったのは偶然でしたが、一目惚れのような感覚で、ここで活動することを決めました。場所が素敵なのはもちろんのこと、村の人たちの文化水準が非常に高くて、多彩な才能を楽しんでいる人たちがたくさんいて。それに、独特の経歴や仕事を持った人がたくさん移住していて、創造性に溢れた方たちが身近にいるというのはとても魅力に感じています」と、南山城村で活動することを誇りに思っておられるようでした。
木の温もり、南山城村の温もりを、永尾さんの作品を通して感じてみてください。
命にも、環境にも、人にも感謝する。
革製品作家の坂田典子さん。

続いては、天然皮革を使用したバッグやお財布、小物を制作する坂田典子さん。タンニンなめしのヌメ革を、ひとつひとつ麻糸で手縫いの作品が特徴です。植物タンニンで手間をかけてじっくりなめされた革は、使うたびに愛着が湧いていきます。

「命からいただいた大切な素材を使わせてもらっているからこそ、感謝の気持ちを込めて、手間と時間をかけています。南山城村は、偶然引っ越してきた場所ですが、自然豊かで、周囲に優れた物づくりの方々がいてくださることで、日々刺激的に作品づくりに取り組めています」と坂田さんは語ります。

坂田さんの作品を手に取ってみると、ひとつひとつの生命への感謝、そしてお客さんへの感謝がひしひしと伝わってくるようです。
柔らかな空気と”語り”を感じて。
オンリーワンの作品に出会える『トロッピカル窯』

『トロッピカル窯』は“熔ろっ光る”を表しているのだそう。自然と寄り添う暮らし、その中から生まれるアイデアを焼き物として形にしています。中でも今回出品していただいている『でんでんねこ』は、作家の今谷紀子さんが20年以上かけてコツコツと作り続けているオンリーワンの作品。
やさしく、個性的な一つ一つの表情からは、今谷さんの愛情をたっぷりと感じます。「焼き物特有の手ざわりはしっかりと残しつつ、でも、どこかやわらかさを感じ、何か“語り”がありそうな作品をつくろうとおもっています」

多肉植物などの植物と合わせるのがおすすめだそう。それだけで、お部屋の雰囲気が一気にオリジナリティ溢れるものになりますよね。セットでギフトとしてプレゼントするのも喜ばれること間違いなしです。
こだわりの宇治茶をお届けする『中窪製茶園』

最後は、宇治茶(緑茶・和紅茶)農家の『中窪製茶園』。ここ南山城村で100年以上にわたり宇治茶を生産しています。お茶にはさまざまな種類がありますが、『中窪製茶園』のお茶は浅蒸しの京都らしい宇治茶。紅茶は品種ごとに異なる製法で、お茶の品種の味や香りの特徴を最大限活かして製茶しているのが特徴です。

「南山城村で代々受け継がれてきた茶畑を伝えるためにも、茶葉の品質にこだわったお茶作りを続けています。私たちのお茶で過ごすひと時がゆったり、ほっこりしたものでありますように。そんな思いを込めて、これからも心を動かすお茶を作っていきたいと思っています」と、思いを打ち明けてくれました。
いつもよりも丁寧にお茶を淹れる時間を楽しみたくなるお茶です。
ものの売り買いではなく、
暮らしを感じてもらえるイベントに。
今回のイベント『山の出合い』では、さまざまな南山城村の作家さんの作品が登場します。そのひとつひとつが都会ではきっと表現できない、南山城村だからこそ完成するものなのでしょう。それぞれの作品にどんな思いが込められているのか、思いを馳せてみるのも楽しみ方のひとつかもしれません。

「どういう暮らしの中からこの作品が生まれてきたんだろう?作家さんはどんな風景を見て日々を過ごしているんだろう?というところまで、私たちは『山のテーブル』として伝えていきたいと思っています。単なるものを売って買うためのイベントではなく、その商品を介して、南山城村での暮らしを持って帰ってもらいたいですね」そう語る對中さんの目は、熱く輝いていました。
■イベント情報■
2021年 2月17日(水)~23日(火・祝)
営業時間:午前10時~午後8時
※最終日は午後4時終了
山の出合い「お茶のある暮らし」京都・南山城村
阪急うめだ本店 10階『うめだスーク』中央街区パーク
■ショップ情報■
「山のテーブル」
住所:〒619-1401 京都府相楽郡南山城村童仙房三郷田47 旧野殿童仙房保育園
営業日時:日曜、月曜 1.2.3 月は冬季休暇
11:00-17:00(L.O16:30)要予約ランチ3日前、 喫茶1日前まで
取材・文/藤田真奈 写真提供/山のテーブル・奥山晴日(茶畑遠景)
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