山内マリコ 第4回「ちゃんと書いておきたいこと」 | SOUQ ZINE スークジン

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山内マリコ 第4回「ちゃんと書いておきたいこと」

山内マリコ 第4回「ちゃんと書いておきたいこと」
各界で活躍するクリエイターの方々に話を聞く「スークインタビュー」。山内マリコさんの最終回は、彼女自身が今まさに直面している悩みと、次に書きたいこと。これからの生活の展望についてもお話しいただきました。

今の自分が向き合うべきテーマ

SOUQ
『ここは退屈迎えに来て』を書いた頃に持っていた鬱屈とした気持ちは消化して乗り越えたものの、また別の悩みが出てくるとおっしゃっていましたが、今現在、悩まれていることがあるんでしょうか?
山内
私は結婚していて子どもはいないんですけど、ネットで「山内マリコ」と検索すると、「山内マリコ 出産」とか、「山内マリコ 子供」ってサジェストされるんですね。やっぱりそこ気になるんだなぁーと。先日も、年配の男性と話していると、唐突に「山内さんも大変だね」って言われて。「ん? なにがですか?」って訊くと、「だってそろそろ子供とか産まなきゃいけないし」みたいな話だったり。別に男性に限らなくて、10代の外国人の女の子と片言で話してたとき、彼女はわたしが25歳くらいの、ちょっとだけおねえさんと思って話してたみたいなんです。年齢を言うとすごく驚いてて、「子供はいますか?」って質問になって。いないよってこたえると、「子供はいた方がいいと思う」って、シリアスなアドバイスをされました(笑)。この年齢の女性は必ずそういう目に遭うものだし、実際、すごく大きなトピックスですよね。だから、次に出すものはそこをちゃんと書こうかなと思っています。
山内マリコ
SOUQ
今、とても多くの女性が悩んでいることでもありますよね。
山内
いろんな意見があるとは思いますが、私は今のところ、絶対に子どもが欲しいというわけではないんです。チャイルド・フリーという考え方があって、何年か前にある女優さんが、雑誌のインタビューで「子供は欲しくなかったからつくらなかった」という発言をして話題になったことがありました。その反応として、できなかったから「欲しくなかった」って言っているんじゃない?というようなコメントもけっこう寄せられたんですね。私は、彼女の発言は本心だと読みましたが。自分は女性だけど、子供や子育てに縛られる人生は嫌だという人は一定数いて、私自身もどちらかと言えばそちら側なので。年齢的には産める今だからこその葛藤もあるし、めちゃくちゃデリケートな、アンタッチャブルなテーマでもある。だけど、ちゃんとそこに向き合っておかない限り、次に進めないテーマでもある。それをきちんと書いておくだけでも、同年代の女性にとっても、下の世代にとっても、意義のあるものになるのかなと。
山内マリコ
SOUQ
同じように抱えていたもやもやを言葉にしてもらえただけで救われることはありますよね。私を含め、山内さんの読者もそうやって歳を重ねていくんだと思います。
山内
そう、だからこそ、ちゃんと歳を取ろうと思っています。今回の『あたしたちよくやってる』を手直ししながら、自分はデビューしてから、その年齢だからこその悩みやもやもやに、すごく正直に向き合ってたんだなぁと改めて気付いたりして。そういう小説やエッセイによって、読者の方が慰められるまではいかなくとも、「あなたもなのね」って思ってもらえたら、それだけで充分、自分の役割は果たせているんじゃないかなと思いました。
山内マリコ

これからの地元との付き合い方。

SOUQ
最後に、お仕事ではなく生活や暮らしの面で、これからやってみたいことはありますか?
山内
地元のラジオ局で番組をやらせてもらっていて、その収録でこの何年かは、富山にひんぱんに出張しているのですが、ゆくゆくは出張ではなく、地元と東京の、二拠点生活をしたいなと考えているところです。東京の生活は、執筆するにはちょっと忙しすぎる。年齢とともにもう少しペースダウンして、じっくり執筆に集中したいと思うようになってきました。昔は「田舎を捨てて都会に出る」とか、「都落ちして地元へ戻る」みたいな、二者択一の選択を迫られたけど、北陸新幹線が開業してからは2時間で行き来できるし、第三の選択肢があってもいいんじゃないかと。もしかしたらそういう暮らし方が性に合ってるかもしれないなぁと、いろいろ夢見てます。
SOUQ
そういう生活スタイルや働き方を選択する人も増えていますよね。
山内
なにが幸せかは人それぞれだし、どういう生活スタイルや働き方が合うかも人によってさまざま。それも、年代によってどんどん変わりますよね。その時その時の自分にとって心地いいものを追及するしかないんだなぁと。今は、目の前の仕事をなんとかこなしながら、たまに旅行に行って、あとは二拠点生活を妄想してるときが幸せかな。今、私がぼんやりしていたら、だいたい実家のリフォームのことを考えてますね。庭にあれを植えて……とか。でも、まずは断熱。田舎の古い一戸建てはとにかく寒いので、何は無くともまず断熱です(笑)!

取材・文/斉村朝子 写真/東泰秀

<NEW BOOK INFORMATION>

『あたしたちよくやってる』山内マリコ(幻冬舎)
年齢、結婚、ファッション、女ともだちーー。結婚している人もしていない人もしたい人も、子どもがいる人もいない人も、女性がぶち当たる問題は様々。自己評価が低くなりがちな女性達の肩を優しく叩いてくれるような短編+エッセイ33編。

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