『YURTAO』前編 偶然から始まったテキスタイル作りの道 | SOUQ ZINE スークジン

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『YURTAO』前編 偶然から始まったテキスタイル作りの道

『YURTAO』前編 偶然から始まったテキスタイル作りの道
テキスタイルデザイナーの木下桃子さんが手がける『YURTAO』。デザインから、織り、染めなどの制作工程に至るすべてをオリジナルで行って生まれるテキスタイルは、多くの人から愛されています。唯一無二のテキスタイルはどのようにして生まれているのでしょう。木下さんとテキスタイルの出会いからうかがいました。

きっかけは “たまたま”の出会い

「すごく大きなきっかけがあったわけじゃないんです」 テキスタイルデザイナーとして歩むようになった経緯をうかがうと、 少しはにかみながらそう話してくれた木下さん。

YURTAO

「大学に入るまでテキスタイルというもの自体よく分かってなかったんですけど、たまたま 入った美術系の大学で、たまたまテキスタイルに触れてみたら、すごく面白いなと思って」 その“たまたま”の出会いこそが、木下さんのテキスタイル人生の始まりでした。 「中学生の頃の夢は旅人でした(笑)」というほど、旅が大好き。大学1年生のときには、中国・雲南省へ。少数民族が暮らす村をいくつか訪れ、民族衣装を着て生活をしている現地の人々の姿に感動し、そこからさらに生地に対する興味が深まったといいます。「世界中の伝統的な生地が好きで。そういったものへの憧れもあって、今オリジナルのテキスタイルを作っているというのもあるかもしれないです」

楽しく生活するために必要なもの

その後もお休みのたびに、木下さんは世界中のさまざまな場所を旅していきます。「中でも印象深かった場所は?」と聞くと、まず挙がったのは、かつて東西の交易路でさまざまな文化が行き交ったシルクロード。「でも、チベット民族のビジュアルも素敵だったし、テキスタイルだけでいうとインドも良かった。どれもそれぞれ印象的だったので、一つに絞るのは難しいですね(笑)」

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そんな風にいろんな場所へと旅した中で出会ったテキスタイルや民族衣装は、制作面でさぞや大きな影響を与えているのだろうな、と思いうかがってみると...。 「私にとって旅はあくまで楽しく生活するために必要なもの。旅先でキレイな布を見て心が洗われて、『よし、私も頑張ろう!』みたいな感じです。もちろん、旅先でいいと思う生地はたくさんありますし、影響をまったく受けてないわけではないのですが、『この民族のここが好きなのでこの作品を作りました』とはならないので、制作活動に必ずしも直結しているとは言えないかもしれません」

“やりたいことを自分のペースでやる”をモットーに

大学卒業後、生地に携わる仕事をしたいと、そこで思ったのが、やりたいことを自分のペースでやる、でした。「テキスタイルに携わることはしていきたいのと同時に、“遊ぶ”=旅することも重要視したいなと思ったんです。あと、ストレス耐性があまりないので、いかにストレスを感じない環境を作れるかも大事だなと(笑)」

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最初は、家でハンドプリントしたテキスタイルで洋服や小物を作るところからスタート。当時はコンセプトを決めてきっちり作品を作っていく、というよりは自身が作ったものをまずはいろんな人に見てもらおうという思いで、制作活動を続けていたそう。それを何年か続けていくうちに、作るテキスタイルの種類やアイテムも増え、興味を持ってくれる人の輪がどんどん広がり、テキスタイルブランドとして確固たる地位を築き上げていきました。2008年のブランド立ち上げから行なっている受注会は、お客さんと木下さんが直に出会える特別な場。期間限定でお店に商品を置いて販売を行うこともありますが、ブランドを立ち上げて10年以上が経過した今でも変わらず年に1回秋に行っています。

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「受注会は今でも私の活動の中心。場所探しから開催のお知らせをお客さんに送るまで、すべてを自分で行うスタイルもずっと変わりません」。 受注会で注文を受けたものを冬の間に制作し、春から夏にかけてはポップアップショップを開催。そうこうしているうちにまた次の受注会のシーズンへ。あっという間に1年が経ってしまうそう。「大変なこともありますが、自分が作りたいと思ったものを実現していくのはすごく楽しいです」とキラキラした笑顔で語る姿がなんともまぶしかったです。

布地作りの全過程に 携わっているからこそできるデザイン

花や木、草、風、水といった自然のものをモチーフにしたパターン(柄)が印象的なオリジナルテキスタイル。自然モチーフを採りいれるのには、どのような理由があるのでしょうか。 「植物や自然物をデフォルメしてパターン化するという手法は、昔からテキスタイルを作る際に人々がやってきたこと。民族衣装の生地のモチーフにも使われていますし、身近なものをデザインモチーフにするという普遍性に惹かれるんです。テキスタイルのデザインを考えるときは今回はこういうパターンでいこう! というよりは、書いているうちにこの形がいいなと思って、パターンにしていくことが多いですね」

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最初の頃はテキスタイルを制作するにあたって、シルクスクリーンプリントを採用していたという木下さん。 「シルクスクリーンプリントは、作ったデザインがそのまま版画のようにプリントされるので、どういう柄にするのかが布作りの中でかなり重要な部分を占めていました」 その後、さまざまなテキスタイルを作っていくうちに、染め方や布を織る際に使用する糸といった、布作りにおける柄以外の部分も意識するようになったそう。 「藍染めとラメ糸の入った服を作りたいと思ったら、ラメ糸はこれくらいの割合で入れて布地に見せるようにしたいなとか。最近新たに藍染めや柿渋染めといった植物染めを始めたこともあって、生地のデザインの仕方は最初と比べると変わってきていますね」 とさらっと答えてらっしゃいますが、これは木下さんがデザインだけではなく、テキスタイル作りの最初から最後まで携わっているからこそできること。どういうものを作りたいか考えたとき、自身がイメージしているものにより近づけることができる強みでもあるのです。

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こういうパターンを作ってみたいと柄から布作りがスタートすることもあれば、この技法でこういうテイストの生地を作ってみたいという思いがまずあって、どういう糸にするか、どういう柄だと面白いか、と発想を膨らませていくことも。どちらも根底にあるのは「やりたいと思うことをやってみること」。木下さんの仕事のモットーです。

どんなテキスタイルにするか決まってこれで終わり...ではもちろんありません。テキスタイル作りはまだまだここからが本番。具体的にどのような過程を経て完成していくのか。後編では、テキスタイルが出来上がるまでの道のり、ブランドとしてこれから挑戦していきたいことをうかがいます。

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YURTAO(ユルタオ)

YURTAO(ユルタオ)

テキスタイルデザイナー木下桃子が主催するアパレルレーベルYURTAO(ユルタオ)です。鎌倉を拠点に少数生産で天然素材を中心にオリジナルのテキスタイルを作り、そこから日常が少し特別になるような衣服を制作しています。

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