+R(プラスアール) 第2回 黎明期には、ユニークなテーマを

個性的なスタイルでファンの心をつかむブランド「+R」。デザイナーのNAMIさんは、服飾専門学校を卒業後、子供服会社に就職。独立して同級生と服づくりを始めました。今回は、一人になってブランド「+R」立ち上げの頃の話をお聞きしました。
- SOUQ
- 二人時代が終わって、そこから一人で自由にやり始めたのですね?
- NAMI
- そうです。最初はリメイクが多かったです。
- SOUQ
- 商品というよりは作品に近い感じですかね?
- NAMI
- いやいや作品なんておこがましい。普通のTシャツをちょっと加工したりとか。
- SOUQ
- 一つ一つ、手づくりしていたんですね。
- NAMI
- この頃は、とにかくいっぱいつくるのがイヤだとすごく思っていて。何個も同じものをつくりたくないと思っていて。リメイクで1点ものをつくっていましたね。

- SOUQ
- まだ販売はしていなかった?
- NAMI
- ただこの頃、初めて展覧会をして、見にきてくれる人も多かったし、まあ買ってみようかという人もちょこちょこいました。
- SOUQ
- どんな展覧会だったんですか?
- NAMI
- 「宇宙」をテーマにした展覧会
- SOUQ
- ほー壮大なテーマですね。なぜテーマを「宇宙」にしようと思ったんですか?
- NAMI
- 写真を撮ってくれる人と、映像をつくってくれた人、アクセサリーやお菓子をつくってくれた人とか、みんなとの合同展にしたんですけど、みんなで話しているうちに「宇宙にしようか」となって。


- SOUQ
- この頃にブランドを立ち上げたんですか?
- NAMI
- えーっと、たぶん(笑)そうです。
- SOUQ
- そのときは、もうブランド名は「+R」だったんですか?
- NAMI
- そうです。なんか短いほうがいいなと思って。いちばん最初は赤い服だけつくろうと思って、REDからの「+R」にしようかなと思って。それから赤い服だけでいけるんだろうか?と思い始めて。黒い服だけとかならいけそうな気がするんですけど、赤い服だけかあ。ちょっと飽きそうやし…。
- SOUQ
- いろいろ逡巡してたわけですね(笑)。
- NAMI
- まあでもREMAKEのRとか、そのときどきでRの意味も変わっていいのかなあと思ってます。アルファベットひと文字だったら、Rの形がかわいいし。
- SOUQ
- ブランド名につながるだけあって、やっぱりラインアップは赤い服が多いですよね?
- NAMI
- そうです。結局、赤と白と黒がベースで、水色とか自分で身につけないものをつくるのはボチボチですかね(笑)。
- SOUQ
- パステルカラーとか淡い色というより、パキッとした色がお好き?
- NAMI
- そうですね。

- SOUQ
- ブランドを立ち上げてからは、どのようにプロモーションしていったんですか?
- NAMI
- 当時は今ほど通販もネットショップも少なくて、街場のショップの知り合いもいなかったんですね。
- SOUQ
- まだ立ち上げたばかりですからね。
- NAMI
- そんなときにちょうど東心斎橋に「jammru」という古着屋がオープンすることなって。今でもそうなんですけど、昔のアメ村のようなストリート系の服が店にいっぱいあって。すごくかわいいと思ったので、私の服を店に置いてほしいとお願いしたんですよ。
- SOUQ
- 売り込みをしたと。
- NAMI
- そう。そしたらラッキーにも取り扱ってくれたんですよ! 1年ぐらい置いてもらってました。

- SOUQ
- それはよかった。他にもお店に持って行ったりしたのですか?
- NAMI
- 堀江に「kitty」っていう古着のセレクトショップがあるんですけど、店主のハナちゃんに私がつくった服を見せたら、「これ『モマパッチワーク』のモマちゃんなら気にいるんちゃう?」て言われて。
- SOUQ
- 「モマパッチワーク」さんも古着を題材にされてますもんね。
- NAMI
- やはり古着の店で。モマちゃんは、自分でも服をつくっています。それで私の服を持って行ったら気に入ってくれて。「一度受注会をやる?」ってなって。お客さんも結構気に入ってくれまして、このとき初めて何枚も服が売れたんですよ。
- SOUQ
- いよいよ受注生産が始まったというわけですね。
- NAMI
- そうですね。そうなると注文と制作のせめぎ合い。こちらは受注してから1枚1枚つくればロスもなくていいんですけど、買うほうとしては、頼んだらすぐ欲しいじゃないですか? だからその頃から、新作を出すときはある程度の数をつくろうとなっていきましたね。

- SOUQ
- ところで、さっきの「宇宙」もそうですが、立ち上げの頃は、テーマを決めてかなり個性的なラインをつくってらっしゃいましたよね?
- NAMI
- その頃、「eateRy」というテーマの食べ物ばかりの服を、アメ村のホテルで開催されていた『BODAIJU EXPO』というイベントに出したりしてましたね。
- SOUQ
- ホテルの部屋で展示をするんですね。
- NAMI
- はい。「eateRy」というのは食堂という意味で、当時のバイト先のお嬢ちゃんをモデルにして、ちゃんと写真も撮って。友達に映像をつくってもらって、それをホテルのテレビで流して。
- SOUQ
- 服を展示するだけじゃなかったんですね?
- NAMI
- そうですね。空間をつくって、服はラックにかけて受注してました。
- SOUQ
- テーマを「eateRy」にしようと思ったのはなぜですか?
- NAMI
- なんでだったかなあ…忘れました(笑)。なんかアイテムをピザの箱に入れて発送したのは覚えてるんですけど。


- SOUQ
- その他にも「BARBER」とか、「ROOTS」とか、毎回全然違うテーマを設けてましたね。
- NAMI
- そうですね。統一感がなくて。最初はそれがいいかどうかわからなかったんですけど。5、6年やってきたら、私も自分が好きなものがわかってきたし、お客さんもだいぶついてきてくれて、こういうのをつくったらいいとか言ってくれて。
- SOUQ
- 「+R」の進むべき道が見えた?
- NAMI
- 最近ははっきりしてきましたかね、だから別にテーマはなくてもいいかなあと思っています。そろそろ暑いから半袖をつくろうかという感じ…あっ、そういえば「+R」ってSSのコレクションばかりでAWがないんですよ。コートとかよう作らんので(笑)
取材・文/蔵均 写真/桑島薫
毎回テーマを変えて、さまざまな顔を見せていた「+R」も、目指すべき道が定まってきたようです。次回第3回は、NAMIさんが考える今の「+R」について話をうかがいます。